「正直に言いますが、
安い保険で良い総入れ歯は作れません・・・」
下の写真は、新しい入れ歯の正面写真です。

８０代の総入れ歯の患者様の物です。
入れ歯が合わなくてよく噛めないと言うことで
作りかえをご希望されました。
まだ完成前の仮合わせの段階です。
ピンクの部分は、ワックス（ろうそくと同じような材質）でできています。
この症例は以前の記事でご紹介した、入れ歯と誤嚥性肺炎のお話の患者様です。
こちらの記事も良かったら読んでくださいね。
★「死亡原因第３位！入れ歯と誤嚥性肺炎の関係！
あなたの入れ歯はカビだらけだって知ってますか？」
さらに、世界初の歯型採りの方法をご紹介した記事も良かったらお読みくださいね。
★「世界初！佐野市近郊では当院のみ！上下の歯型を同時にお採りします」
「最先端の総入れ歯の歯型の採り方です」
下の写真は、咬合器というアゴの動きを精密に再現できる器械に
装着されているところです。

ドイツ製ですよ！非常に頑丈で精密にできています。
一台、数十万円します・・・。
実はほとんどの歯医者さんは、この咬合器という器械を持っていません・・・。
いったいどうやって、精密な咬みあわせの入れ歯を作るのでしょう・・・。
ちなみに、私は歯科オタクなので数十台持ってます！
これ、ほんの一部です。

こちらも読んで下さい。
★「これ持ってない歯医者さんには、行かない方が良いです・・・。
真面目な歯医者さんの選び方」
脱線しましたが、話を戻します。
この入れ歯を横から見ますね。

そして、上の入れ歯だけを外します。

あなたには何の事やら、サッパリ解らないと思いますが、
下の入れ歯の前歯の位置が、
ものすごく前方（側面写真では、左より）にあります。
上のアゴの歯茎の膨らみの遙か彼方に下の前歯が並んでいます・・・。
この写真を入れ歯の上手な歯医者さんが見たら、ビックリするレベルです。
私も、歯医者人生３０年で２人目の強敵です・・・。
何が難しいのかと言うと、上の入れ歯が安定しないのです・・・。
咬む力が入れ歯を外す力になるからです。
吸盤のように吸着している上アゴの総入れ歯でも、
前歯に力が加わると喉の方から空気が入り
簡単に外れてしまうのです。
できるだけ下の前歯は、後方に並べたいのです。
でも、この下の前歯の位置が限界なのです・・・。
何となく、理解できますか？
できませんよね・・・？（笑）
とにかく、上下のアゴの大きさのバランスが非常に悪いのです・・・。
上下の入れ歯を外すとこんな感じです。
とにかく、泣きそうな状態です・・・。

ではお口の中に入れてみます。
下の入れ歯は非常に安定しています。
仮合わせの段階で、ピッタリ良く吸いついています。
最近、歯医者さんの投稿している動画で
「下アゴの入れ歯が吸いついて外れない」というようなものを見かけますが
歯医者さんの世界では、
下アゴの入れ歯が吸いつくように作る事は難しいとされています。
上の入れ歯は、支えるアゴの骨が無いので多少揺れますが良い感じです。
まずは、一安心です。
次回は、いよいよ完成です。

ちなみに、治療前はこんな感じです。
入れ歯が不安定でどこで咬んで良いか解らない状態でした・・・。

この患者様は、どこの歯医者さんでも、
「○○さんの入れ歯は難しくてどうにもならない・・・」
って、言われ続けてきたそうです・・・。
「お金がかかっても良いから、よく噛める入れ歯にして欲しい」
とお願いしても断られるそうです・・・。
ある意味、自信が無い仕事を引き受けないのですから
良心的な歯医者さんかも知れませんが、
入れ歯の専門家の私からすれば、
総入れ歯は、お金をかけなければ良い物は作れません・・・。
特に、このような難症例はごまかしが効かないので
手間暇をかけられない保険の入れ歯では不可能です・・・。
そして、そもそも簡単な総入れ歯はありません・・・。
歯医者さんの治療技術の集大成なのです。
そして優秀な歯科技工士さんとチームを組まなければ、成功しません。
優秀な技工士さんは、安い保険の仕事は引き受けてくれないのです。
良い物は高いのは、当たり前なのです。
もちろん歯医者さんが、入れ歯を一個製作するために
数十万円の赤字を出すつもりなら保険でも良い入れ歯が作れますよ・・・
よ～く考えてください。
総入れ歯は、何にも目印の無い、真っ平らな歯肉の上に
歯医者さんが勝手に、歯を復元するのですよ・・・。
だから総入れ歯の上手な歯医者さんは、とても少ないのです。
参考までに、古い入れ歯と製作中の入れ歯を並べて見ますね。
上の入れ歯です。

そして、裏側です。

下の入れ歯です。

そして、裏側です。

大きさが全然違うのは、一目瞭然ですよね？
いかがですか？
入れ歯のあなたによ～く考えて欲しいのですが、
入れ歯は人工臓器です。
あなたの身体の一部となり、
生きるために無くてはならない人工臓器です。
良い入れ歯は、弛んだ口元の張りを取り戻し、
あなたを若返らせる事もできるのです。
さらに、あまり知られていませんが
不安定な悪い咬みあわせの入れ歯を装着していると
身体の平衡感覚がとれないため
高齢者の転倒の原因にもなるのですよ・・・。
ウソだと思うなら、入れ歯を外した状態で片足で立って見て下さい。
身体のバランスがとれませんよ。
身体のバランスをとるためには、
一番高い所に乗っかっている、重たい頭を安定させる必要があるのです。
それを支えているのが首の筋肉です。
その首の筋肉がくっついているのが、下アゴの骨です。
下アゴがしっかり固定されなければいけません。
そのためには、しっかりした咬みあわせが重要なのです。
何となく理解できましたか？
入れ歯でお悩みのあなた！
入れ歯で悩むなんて、人生の時間がもったいないですよ。
あなたもそろそろ自分の身体にご褒美をあげませんか？
でも総入れ歯が上手な歯医者さんは、とても少ないです。
歯医者さん選びは慎重にお願いしますね。
ではまた。